このたび、東京都文京区白山にある東洋大学にて、第71回日本病跡学会総会を開催する運びとなりました。前回の本学での開催(第55回)は2008年になりますので、15年以上の月日が流れたことになります。その間、特別講演ゲストだった建築家/アーティストの荒川修作氏は逝去し、東日本大震災が日本社会を襲い、処理水等々の対処に関して、今も原発の傷跡を日本に残しています。また2010年代に入り、AI革命に社会が湧いたと思えば、20年代に入るとコロナウイルスのパンデミックが世界を混乱させ、現在の技術ではとても太刀打ちできない自然の猛威に直面させられたとも言えます。

 こうした時代の流れを受けて、改めて、みなさま方を東洋大学にお招きし、日本における病跡学という知にかかわる議論の礎のひとつになれることを、心より嬉しく思っております。東洋大学は学祖井上円了による「哲学館」としてスタートしました。手前味噌となり恐縮ですが、哲学研究者として、今、若手で勢いのある本学のスタッフの力を借りて、シンポジウムの一つを担当させていただきます。

 特別講演は、人類学者として医療の現実を見つめる磯野真穂さんにお願いし、教育講演はデータサイエンティストの淺田義和さんと美術史家の森耕治さんにご発表を依頼しております。もう一つのシンポジウムは、西依康さんにコーディネーターになってもらい「病跡学という欲望」というテーマでの企画を組んでいただいております。

  「メタパトグラフィー」という、いささか大きすぎるテーマかもしれませんが、チャレンジングな内容になるよう企画をさらに練り上げたいと思っております。みなさま方にお目にかかれることを楽しみにすると同時に、多くの方々のご参加を心よりお待ち申し上げております。

第 71 回 日本病跡学会総会 会長 稲垣 諭(東洋大学)